「ダイエット=糖質制限」というイメージが定着しつつありますが、本当にそうでしょうか?
確かに、糖質制限は短期間で体重を落とせる効果的な方法ですが、実は健康面や体型維持の観点から考えると、いくつかの注意点があります。
今回は、糖質制限のメリット・デメリットを踏まえながら、糖質の正しい知識やダイエットを成功させるための効果的な摂取方法について、科学的根拠に基づいて詳しく解説していきます。
1. 糖質制限で痩せるメカニズム
糖質制限で痩せるメカニズムを理解するために、まずは人間の体におけるエネルギー代謝について理解する必要があります。
私たちの体は、主に糖質と脂質をエネルギー源としています。
1-1. 糖質がエネルギー源となるメカニズム
糖質は、体内でブドウ糖に分解され、血液によって全身に運ばれます。そして、インスリンというホルモンの働きによって細胞に取り込まれ、エネルギーとして利用されます。
1-2. 脂質がエネルギー源となるメカニズム
糖質が不足すると、体はエネルギー源を脂質に切り替えます。
体内に蓄えられた体脂肪は、遊離脂肪酸とグリセロールに分解されます。遊離脂肪酸は、筋肉などでエネルギーとして利用され、グリセロールは肝臓でブドウ糖に変換され、エネルギー源として利用されます。
1-3. 糖質制限が体重減少に繋がる理由
糖質制限を行うと、体内の糖質が枯渇し、体はエネルギー源として体脂肪を優先的に使うようになります。その結果、体脂肪が燃焼され、体重が減少すると考えられています。
2. 糖質制限ダイエットの6つのデメリット
糖質制限は、短期間で体重を落とせる効果的なダイエット法として人気ですが、一方で健康面や体型維持の観点から考えると、いくつかデメリットもあります。
ここでは、糖質制限ダイエットのデメリットとして挙げられる6つの項目について解説していきます。
2-1. リバウンドのリスク
糖質制限ダイエットは、短期間で体重を減らすことはできますが、リバウンドのリスクが高いというデメリットがあります。
研究内容 | 結果 |
糖質制限ダイエットと低脂質ダイエットの減量効果を1年間追跡調査 | 糖質制限ダイエットは、6ヶ月後までは低脂質ダイエットよりも減量効果が高かったが、1年後には差がなくなった |
食事制限による減量後、1年間の体重変化を追跡調査 | 減量後、糖質の摂取量が多い人ほどリバウンドしにくいという結果になった |
2-2. 筋肉量の減少
糖質は、筋肉内にグリコーゲンという形で貯蔵されています。糖質制限を行うと、筋肉内のグリコーゲンが枯渇し、筋肉が分解されてエネルギーとして利用されてしまいます。
その結果、筋肉量が減少し、基礎代謝が低下し、太りやすい体質になってしまいます。
2-3. 筋力低下のリスク
糖質制限を行うと、筋肉内のグリコーゲンが枯渇し、筋力が低下しやすくなります。
研究内容 | 結果 |
通常時とグリコーゲン減少時のベンチプレスの挙上回数を比較 | 糖質が十分にある状態では、1セット目18回、2セット目14回だったのに対し、糖質が枯渇した状態では、1セット目12回、2セット目10回と挙上回数が減少 |
2-4. テストステロンの減少
糖質制限ダイエットは、テストステロンという男性ホルモンの分泌量を減少させる可能性があります。テストステロンは、筋肉の成長や維持、脂肪の燃焼、意欲や集中力、骨密度などに深く関わっている重要なホルモンです。
研究内容 | 結果 |
糖質制限食と高糖質食におけるテストステロン濃度を比較 | 糖質制限食は、高糖質食と比べてテストステロン濃度を35%低下させることが明らかになった |
2-5. 便秘や頭痛などの副作用
糖質制限ダイエットは、便秘や頭痛などの副作用を引き起こしやすいというデメリットがあります。
副作用 | 糖質制限ダイエット | 低脂質ダイエット |
便秘 | 68% | 35% |
頭痛 | 60% | 40% |
口臭 | 38% | 8% |
筋力低下 | 25% | 8% |
2-6. 糖尿病リスクの上昇
近年、糖質制限ダイエットが糖尿病の発症リスクを高める可能性があるという研究結果が報告されています。
研究内容 | 結果 |
BMIが正常な参加者120名を対象に、低糖質ダイエットを実施 | 低糖質ダイエットを行ったグループは、行わなかったグループに比べて、糖尿病を発症するリスクが高くなった |
BMIが正常な人と肥満の人の2つのグループに低糖質ダイエットを実施 | BMIが正常なグループでは糖尿病のリスクが上昇したが、肥満グループでは糖尿病のリスク上昇は見られなかった |
3. 糖質制限ダイエットは誰にでもおすすめできるわけではない
糖質制限ダイエットは、短期間で体重を減らすことができる一方、上記でご紹介したように健康上のリスクも懸念されています。
そのため、糖尿病や心臓病、腎臓病などの持病がある人や妊娠中の人は、糖質制限ダイエットを行う前に必ず医師に相談するようにしてください。
また、健康な人であっても、糖質制限ダイエットを行う場合は、無理せず、栄養バランスを考えた食事を心がけるようにしましょう。
4. 糖質の正しい知識
糖質は、体に必要な栄養素である一方、過剰に摂取すると体脂肪として蓄えられてしまう可能性があります。
ここでは、糖質の働きや種類、1日の摂取量の目安、血糖値を上げないための摂取のポイントなど、糖質に関する正しい知識を身につけましょう。
4-1. 糖質の働き
糖質は、三大栄養素の一つであり、体を動かすためのエネルギー源として重要な役割を担っています。
特に、脳や神経はブドウ糖しかエネルギー源として利用できないため、糖質が不足すると、集中力や思考力の低下、疲労感、倦怠感などを引き起こす可能性があります。
4-2. 糖質の種類
糖質は、大きく分けて以下の3つの種類に分類されます。
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単糖類
単糖類は、糖質の中でも最も構造が単純な糖質です。単糖類には、ブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)、ガラクトースがあります。
ブドウ糖は、ご飯やパン、麺類などに多く含まれており、脳や体を動かすためのエネルギー源として利用されます。
果糖は、果物や蜂蜜などに多く含まれており、ブドウ糖よりも甘味が強いのが特徴です。
ガラクトースは、乳製品などに含まれており、脳の神経細胞を作るために必要な成分です。 -
二糖類
二糖類は、2つの単糖類が結合した糖質です。二糖類には、ショ糖(スクロース)、麦芽糖(マルトース)、乳糖(ラクトース)などがあります。
ショ糖は、砂糖の主成分であり、サトウキビやテンサイから作られます。
麦芽糖は、でんぷんが分解されてできる糖で、水飴や麦芽飲料などに含まれています。
乳糖は、牛乳や乳製品に含まれている糖で、赤ちゃんの成長に欠かせない成分です。 -
多糖類
多糖類は、多数の単糖類が結合した糖質です。多糖類には、でんぷん、グリコーゲン、食物繊維などがあります。
でんぷんは、ご飯やパン、芋類などに多く含まれており、体内ではブドウ糖に分解されてエネルギー源として利用されます。
グリコーゲンは、動物の体内に貯蔵されている糖質で、主に肝臓と筋肉に蓄えられます。
食物繊維は、野菜や果物、海藻などに多く含まれており、腸内環境を整えたり、血糖値の上昇を抑えたりする働きがあります。
4-3. 糖質の1日の摂取量の目安
厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、1日に必要なエネルギーのうち、糖質から摂取するエネルギーの割合は、50~65%が目安とされています。
例えば、1日に2000kcal必要とする人の場合、糖質から摂取するカロリーは1000~1300kcalが目安となります。
糖質は1gあたり4kcalなので、1日に摂取する糖質量の目安は250~325gとなります。
年齢 | 推定エネルギー必要量(kcal) | 糖質からのエネルギー摂取量の目安 | 糖質の摂取量の目安(g) |
18~29歳 | 男性:2650kcal | 1325~1722.5kcal | 331.25~430.625g |
女性:1950kcal | 975~1267.5kcal | 243.75~316.875g | |
30~49歳 | 男性:2600kcal | 1300~1690kcal | 325~422.5g |
女性:1900kcal | 950~1235kcal | 237.5~308.75g | |
50~69歳 | 男性:2200kcal | 1100~1430kcal | 275~357.5g |
女性:1700kcal | 850~1105kcal | 212.5~276.25g |
※上記の表はあくまで目安です。個人の体質や活動量によって、適切な糖質の摂取量は異なります。
4-4. 血糖値を上げないための糖質の摂取のポイント
食後の血糖値の急上昇は、脂肪を溜め込みやすくしたり、糖尿病のリスクを高めたりする原因となります。
血糖値を上げないためには、以下のポイントを意識して糖質を摂取するようにしましょう。
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野菜から食べる
野菜に多く含まれる食物繊維は、糖質の吸収を穏やかにし、血糖値の急上昇を抑える効果があります。そのため、食事の際は、野菜から食べるようにしましょう。
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よく噛んで食べる
よく噛んで食べることで、血糖値の上昇が緩やかになります。
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食物繊維を一緒に摂取する
食物繊維は、糖質の吸収を遅らせ、血糖値の上昇を抑える効果があります。そのため、糖質を摂取する際は、食物繊維も一緒に摂取するように心がけましょう。
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GI値の低い食品を選ぶ
GI値とは、食後の血糖値の上昇を示す指標のことです。GI値が高い食品ほど、血糖値が上昇しやすいため、GI値の低い食品を選ぶようにしましょう。
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糖質の摂り過ぎに注意する
糖質を摂り過ぎてしまうと、血糖値が急上昇し、脂肪として蓄えられやすくなってしまいます。そのため、糖質の摂取量には注意が必要です。
5. ダイエット中に意識したい糖質源
ダイエット中は、糖質の量だけでなく、質にもこだわるようにしましょう。
ここでは、ダイエット中に積極的に摂取したい糖質源と控えた方が良い糖質源をご紹介します。
5-1. ダイエット中に積極的に摂取したい糖質源
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玄米、雑穀米
白米よりも食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富に含まれています。
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全粒粉パン
白いパンよりも食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富です。
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そば
GI値が低く、血糖値が上がりにくい麺類です。
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さつまいも、かぼちゃ
食物繊維が豊富で、ビタミンやミネラルもバランス良く含まれています。
5-2. ダイエット中に控えた方が良い糖質源
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白米、白いパン、うどん、ラーメン
GI値が高く、血糖値が上昇しやすいです。
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砂糖を多く使ったお菓子やジュース
糖質が多く含まれており、血糖値が急上昇しやすいため、注意が必要です。
6. 筋トレと糖質の関係性
筋トレを行う人にとって、糖質は非常に重要な栄養素です。
糖質は、筋トレのエネルギー源となるだけでなく、筋トレ後の筋肉の回復や成長にも大きく貢献しています。
6-1. 筋トレにおける糖質の役割
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エネルギー源となる
筋トレ中は、筋肉を動かすためのエネルギー源として糖質が消費されます。糖質が不足すると、体がエネルギー不足に陥り、十分なパフォーマンスを発揮することができなくなってしまいます。
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筋タンパク質の分解を抑制する
筋トレ中は、筋肉が分解されてしまうことがあります。しかし、糖質を摂取することで、筋タンパク質の分解を抑制することができます。
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筋トレ後の筋肉の回復を促進する
筋トレ後は、筋肉がダメージを受けています。糖質を摂取することで、筋肉の修復に必要なエネルギーを供給し、筋肉の回復を促進することができます。
6-2. 筋トレの効果を高める糖質の摂取タイミング
筋トレの効果を高めるためには、筋トレ前と筋トレ後に糖質を摂取することが効果的です。
6-2-1. 筋トレ前の糖質摂取
筋トレ前に糖質を摂取することで、筋トレ中のエネルギー源を確保することができます。
おすすめの糖質源としては、消化吸収が穏やかで、血糖値の上昇が緩やかな、バナナやオートミールなどが挙げられます。
6-2-2. 筋トレ後の糖質摂取
筋トレ後は、筋肉がダメージを受けているため、筋肉の修復と成長を促進するために糖質を摂取することが重要です。
おすすめの糖質源としては、白米やおにぎり、食パンなど、消化吸収が早く、エネルギーに変換されやすいものがおすすめです。
6-3. 注意点:糖質の過剰摂取は禁物
糖質は筋トレに効果的な栄養素ですが、だからといって過剰に摂取してしまうと、体脂肪として蓄えられてしまう可能性があります。
筋トレの効果を最大限に引き出しつつ、体脂肪を増やさずに体型を維持するためには、適切な量の糖質を摂取するように心がけましょう。
7. まとめ|糖質と上手に向き合って健康的なダイエットを目指そう!
今回は、糖質制限ダイエットのメリット・デメリットや糖質の正しい知識、ダイエット中の効果的な糖質の摂取方法などについて詳しく解説しました。
糖質は、私たちにとって必要不可欠な栄養素ですが、摂り過ぎると肥満や生活習慣病のリスクを高める可能性があります。
反対に、不足するとエネルギー不足に陥り、疲労感や集中力・思考力の低下、筋力低下などを引き起こす可能性があります。
糖質と上手に付き合っていくためには、糖質の働きや種類、1日の摂取量の目安、血糖値を上げないための摂取のポイントなどを理解することが大切です。
今回ご紹介した内容を参考に、糖質と上手に付き合っていきながら、健康的なダイエットを目指しましょう。